「 ふざけ 」一覧

朝まで眠り姫

美しき姫よ。貴女を目覚めさせるには、王子である私が口づけをするしかないそうです。
愛する姫よ。愛しているからこそ、私は貴女の幸福を願うのです。
だから考えるのです。このまま眠っていた方が幸せではないのかと……。

 
『激論!眠り姫を起こすことが幸せか!』
(論客:王子、小人A、小人B、小人C、小人D、小人E)
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龍の選択

「パンツが、消えちゃった……」

 
その日は暑くも寒くもなく、晴れでも雨でもなく、店内で流れている曲は良い曲でも悪い曲でもなく、しかしながら僕の隣にいる彼女は汗を滲ませ、今にも降り出しそうな苦悩の表情を浮かべながら、両手で耳をかるく塞いでうつむいている。

穿いていたパンツが突如として消失した。
彼女の話を端的にいうと、そういうことらしい。
からかっているわけでも、嘘をついているわけでもないのは彼女を見れば一目瞭然だった。

彼女が突然ファミレスへ入ろうと言い出したのが30分前。
入店後すぐに化粧室へ飛び込んでいったのが25分前。
苦悩の表情で席に戻り、冒頭のセリフを告げたのが3分前。
彼女が泣いたこと、泣いて落ちた化粧を直したことに僕が気付いたのもやはり3分前だった。

「穿いてたんだよ、絶対。それが歩いてたら急に変な感じがして、トイレで確認したらやっぱりなくて……ごめんマジ意味わかんないね。あたしも意味わかんない。意味わかんない……」

彼女のパンツが突然消失した時、なんと声をかければいいのだろう。
きっとどの雑誌や教科書にも載ってなくて、セオリーや文化もない。
それならば、僕は僕の言葉で何かを言ってあげなくては、と思った。

「神隠しにあったなら、神様しか隠し場所を知らないよ。今度、神様に聞いておくから、今日は新しい下着を買いに行こう」

気の利いたセリフは言えないけれど
天気を変えることは出来ないけれど
彼女の表情なら、少しは変えることが出来た。

 
彼女のパンツがどうなったのかはわからない。
彼女の勘違いかもしれないし、本当に神隠しなのかもしれない。
僕らには、それを突き止める術も必要もない。

謎があるなら、謎をかすがいにしよう。

いつもより少し強く繋いだ手の中に、僕は謎や希望を詰め込んだ。

 
 
 
…………
………
……

 
 
 
──その頃、地球某所──

「どんな願いも一つだけ叶えてやろう」

「ギャルのパンティーおくれーーーーっ!!!!!」


アブドミナル&サイ

今のぼくの状況を簡単に説明しよう。
手を頭の後ろに組んで、こめかみに銃口をつきつけられている。
なんともわかりやすい人質の姿勢だ。

たまたま公園で休んでいると、逃走中の犯人がやってきて、ぼくを人質にとった。
周囲にはたくさんの警察官、パトカー、野次馬で溢れている。
犯人が何をしたのかは知らない。というか、そんなことを気にしている余裕がない。
ぼくの心は千々に乱れている。今にも大声で叫びながら走り出してしまいたい気分だ。
しかし、それも出来ない状況だ。一体ぼくが何をしたというんだ。どうしてこうなった。
考えれば考えるほど、思考は一つの結論に収斂していく。

死にたい。

それしかない。いっそ殺してくれ。
どうしてこうなった。
どうしてこうなった。
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だってトマトが絶品だから

遅刻の認識には二種類ある。
今からでは間に合いそうにない暫定型か、既に約束の時刻が過ぎている事実型だ。
僕の場合は明らかに後者で、また多くの人が絶望より開き直りに徹するのも後者だった。
しかし僕は絶望も開き直りもしない。そんな時間すら惜しいからだ。
寝癖も直さず顔も洗わずトイレさえ我慢して、韋駄天走りで駅前の喫茶店へと急いだ。

彼女の待つ喫茶店へ。
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