「 創作 」一覧

謎笛

「あーまた負けた。最近ついてねぇなぁ……」

男はパチンコで負けた苛立ちを煙に乗せて排除しようと懐に手を入れるや、タバコを切らしていることに気がついた。
自動販売機に残りわずかしかない硬貨を押しこみボタンを叩く。

「これで残金100円か……」

一刻も早く苛立ちと一緒に絶望も排除しなければとタバコに火をつける。
ひと時の安寧を肺に収め、幾度となく繰り返した反省をまた繰り返しながら、最初の灰を落とした。
その時になってようやく、男は自動販売機の横に小さく佇むまた別種の自動販売機があることに気がついた。

「おぉーガチャガチャか、懐かしいな」
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叶わぬ願い

こんなことを言うと怒られるかもしれないけど、どうして君が僕と一緒になったのか今でもわからない。
僕は決して良い夫ではなかったし、本当に君が幸せだったのか自信だってもてないようなやつだよ。
うだつも風采も上がらない僕のどこが良かったの?

僕はいつも冗談ばかり言うダメなやつで、反対に君はしっかり者で、周囲にもそれをからかわれたね。
それに僕には持病があったし、君はいつだって健康だった。
だからね、先に逝くのは絶対に僕の方だって思っていたんだけどな。

りんごの皮を剥く君に「手先が器用だね」って褒めたら、「あなたのせいよ」って。
あの皮肉も、もう聞けないと思うと、もっと色々褒めておけば良かったなって思うよ。

君は死んでしまってからも僕を驚かせるね。
どうやって僕にバレずにこんなに貯めこんだの?
生きていたら、君はやっぱり皮肉で返したかな。
稼ぎが少ない中で、君がこれほどやりくりしていたなんて、死んでしまった後になってようやく気付く。
本当に僕はダメなやつだね。

ダメな僕が持っていると使ってしまうから、君はこっそり貯めていてくれたんだね。
君か僕……どちらかが一人になったとき、大丈夫なようにって。
もう決して叶うことはないけれど……僕は願ってしまうよ。

一度でいいから見てみたい。女房がヘソクリ隠すとこ。歌丸です。


朝まで眠り姫

美しき姫よ。貴女を目覚めさせるには、王子である私が口づけをするしかないそうです。
愛する姫よ。愛しているからこそ、私は貴女の幸福を願うのです。
だから考えるのです。このまま眠っていた方が幸せではないのかと……。

 
『激論!眠り姫を起こすことが幸せか!』
(論客:王子、小人A、小人B、小人C、小人D、小人E)
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ふたりの文通

最初の手紙? もちろん覚えてるよ。
目覚めるとテーブルの上にノートが開かれて置いてあったんだ。
そこには『あなたと話がしたい』とだけ書かれてあった。
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