「 創作 」一覧

アブドミナル&サイ

今のぼくの状況を簡単に説明しよう。
手を頭の後ろに組んで、こめかみに銃口をつきつけられている。
なんともわかりやすい人質の姿勢だ。

たまたま公園で休んでいると、逃走中の犯人がやってきて、ぼくを人質にとった。
周囲にはたくさんの警察官、パトカー、野次馬で溢れている。
犯人が何をしたのかは知らない。というか、そんなことを気にしている余裕がない。
ぼくの心は千々に乱れている。今にも大声で叫びながら走り出してしまいたい気分だ。
しかし、それも出来ない状況だ。一体ぼくが何をしたというんだ。どうしてこうなった。
考えれば考えるほど、思考は一つの結論に収斂していく。

死にたい。

それしかない。いっそ殺してくれ。
どうしてこうなった。
どうしてこうなった。
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だってトマトが絶品だから

遅刻の認識には二種類ある。
今からでは間に合いそうにない暫定型か、既に約束の時刻が過ぎている事実型だ。
僕の場合は明らかに後者で、また多くの人が絶望より開き直りに徹するのも後者だった。
しかし僕は絶望も開き直りもしない。そんな時間すら惜しいからだ。
寝癖も直さず顔も洗わずトイレさえ我慢して、韋駄天走りで駅前の喫茶店へと急いだ。

彼女の待つ喫茶店へ。
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代行者

憂鬱な月曜日が過ぎ、億劫な火曜日が来て、中だるみの水曜日。
僕は会社が定めたノー残業デーをしっかり守り退社し、最寄り駅へ到着したところで時間を確認する。そろそろかな、と思ったところで携帯が震えた。
「ラズベリー」からのメールだ。僕はいつも通り返信する。
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少年は

少年は死んでしまいました。
ピンポンダッシュをした家が、魔王の棲家だったからです。
まさか魔王が城ではなく家に住んでるとは思わず、少年も気軽にピンポンダッシュをしてしまいました。
結果、灰になりました。前世はどうでしょう。

少年は死んでしまいました。
コンコンダッシュをした後、逃げる最中に足を滑らせて傍にあった樽の中に突っ込んでしまったのです。
樽の中には小さな樽があり、その中にはまた小さな樽があり、入れ子構造になっている全ての樽を少年は破壊しました。
結果、無限を感じながら無になりました。前世はどうでしょう。

少年は死んでしまいました。
ウォウウォウダッシュをしたのはいいものの、ウッホリーにウォホッバがウボしてしまったからです。
結果、ウホウホになりました。前世はどうでしょう。

少年は風でした。
気のむくままに吹く、一陣の風だったのです。
灰も、無も、ウホウホも。全てに平等に吹く、風だったのです。
前世はどうでしょう。

知りません。


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