私が眼鏡をしない理由

「ねぇ、どうしてメガネしないの?視力悪いのに」

「高いからよ。皆がリサの家のようにお金持ちじゃないのよ?」

嘘だ。私が眼鏡をしないのは汚いものを見たくないから。
私の世界にはボヤけた輪郭が丁度良い。
汚いからモザイクがかかっているのだ。
わざわざそれを取り除く必要なんてない。

「えーでも不便じゃない? それに今日席替えあるし、後ろになったらどうするの? 黒板見える?」

「リサのノートがあるから大丈夫よ」

「ちょっとー! 人のノート当てにしないでよぉー!」

可愛くて、丸くて、女の子の字。
リサの字。リサのノート。

『おーい席つけー!HR始めるぞー!』

隣の席のリサ。
ボヤけていてもわかるよ。
うっすら紅色に染まる頬。
トボけたってわかるよ。
リサが誰を好きなのか。

私が眼鏡をしないのは嫌なものを見たくないから。
あの人の顔を見たくないから。
私が眼鏡をしないのは好きなものを見たくないから。
リサの顔を見たくないから。

可愛くて、柔らかくて、女の子のリサ。
リサの顔。リサの身体。リサの。

私が眼鏡をしないのは汚いものを見たくないから。
私の心にはモザイクをかけていたいから。


だから世界は、ボヤけたままでいい。

スポンサーリンク
マニッキ広告
マニッキ広告

シェアする

フォローする