理想的ゾンビちゃん

人は何かに追いかけられて生きている。
追いつかれないために逃げる。

犬に追いかけられて高いところへ逃げたり
国家機関に追いかけられて海外へ逃げたり
過去に追いかけられて未来へ逃げたり。

かくいう俺も、今まさに追いかけられている最中だ。
相手はドジでノロマな女の子。羨ましいだろ?まぁ、ただ、ゾンビなんだけどね。
どうやら彼女は俺に一目ぼれしたらしい。毎日飽きもせず俺の後を追ってくる。
しかし追いつかれることは無い。ゾンビというのは動きが遅い。
だらしなく両手を前に突き出し、一歩一歩を踏みしめて歩く。決して走りはしない。
ゲームなんかでは素早いゾンビが出てきたりするが、あれは邪道だ。
ノロマであってこそのゾンビ。ジリジリ追い詰められてこその恐怖だ。

その点、彼女は理想のゾンビである。
ドジでノロマで単細胞。しかし確実に足跡を辿ってくる。
一歩一歩を大切に。人も少しはゾンビを見習うべきだろう。
彼女のことは嫌いではない。むしろ好感を抱いている。
しかし、自分の命も大切なので捕まるわけにはいかない。
近づかれると逃げなきゃいけないから不便もあるけど、今の状況を結構楽しんでいる。
睡眠不足は少しやっかいだけどね。ふぁ~あ。

俺は彼女に追いかけられている。
彼女もまた、何かに追いかけられて生きているのだろうか。そもそも生きているのだろうか。
俺も何かを追いかけているのだろうか。追って追われて世界は円になっているのだろうか。
それなら自分は世界の一部として上手く機能しているのだろう。こんなにも目に見える形で。

では、彼女がいなくなったら?彼女に追われなくなったら?
自分は世界の理から追い出されてしまうのではないか?
そう思うと彼女が愛おしくてたまらない。でも触れることはできない。
いつまでもこの関係が続けばいい。追って、追われて、No zombi, No life!

終わりはいつも突然に。
「ロミオとジュリエット効果」って知ってるかい?
障害があるほど恋は燃えるというやつだ。
目的達成意欲を高めるあまり、彼女は思わぬ行動にでた。


走ったのだ。

俺の方が走るのは速いが、彼女のスタミナは無限。
だから今こうして噛み付かれてるわけなんだけど。あ、痛い。
複雑な心境だ。理想のゾンビ像を崩された不快感と、彼女と抱き合えた喜び。
まぁ、いいか。これから俺もゾンビになるのだろう。そして誰かを追いかけるのだろう。
それならきっと世界の理から追い出されたりしないさ。

薄れ行く意識の中で、彼女の足を見た。
NIKE FREE RUN+を履いていた。
あぁ、そりゃぁ、走りたくなっちゃうよなぁ……。


──ゾンビも思わず走り出す、NIKE FREE RUN+──


っていうCMを考えたんですけど、どうですかNIKEさーん!
実はゾンビちゃんは男の靴を狙っていた、という別バージョンもありますよー!



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